「ゴーギャンとポン=タヴァンの画家たち展」
10/29-12/20

パナソニック汐留ミュージアムで開催中の「ゴーギャンとポン=タヴァンの画家たち展」を見てきました。
いわゆるポスト印象派の画家として知られるポール・ゴーギャン。彼が絵画における新しい時代を開いた切っ掛けの一つに、フランス北西部ブリュターニュはポン=タヴァンへの滞在経験がありました。
そのゴーギャンのポン=タヴァンでの制作を俯瞰する展覧会です。またタイトルにも記載があるように、ほぼ同時代、ゴーギャンとともにポン・タヴァンで活動した画家もあわせて紹介しています。
ゴーギャンがポン=タヴァンへやって来たのは1886年。37、8歳の頃です。最初の滞在は夏から秋にかけておおよそ3ヶ月間。土地の風景を気に入ってはデッサンや油彩画を描きました。2年後にも再びポン=タヴァンを訪れます。この時に会ったのがエミール・ベルナールです。若きベルナールの才能に感化されたゴーギャンは、平坦な色面を黒い輪郭線で囲むクロワゾニスムと呼ばれる様式に関心を示します。

ポール・ゴーギャン「2人のブルターニュ女性のいる風景」 1888年 ニイ・カールスベルグ・グリプトテク美術館
印象派風ながらも、後の画風を予見させるのが、「2人のブリュターニュ女性のいる風景」です。筆触は繊細。しかしながらクローズアップされた女性や、かなり大きな牛の存在など、遠近感、ないし空間表現には大胆さも見られます。手前から奥へV字に分かれる道路も特徴的でした。

ポール・セリュジエ「呪文或いは物語 聖なる森」 1891年 カンペール美術館
ナビ派のメンバーでもあるポール・セリュジエの「呪文或いは物語、聖なる森」に魅せられました。ブリュターニュの伝説を題材にしたという一枚、深い森の中で3人の女性が火を起こしては儀式をしています。赤褐色で立ち並ぶ樹木は平面的です。リズムすら感じられます。日本美術に影響を受けたのでしょうか。その神秘的な様相は象徴派絵画を思わせました。

エミール・ベルナール「会話(ステンド・グラスのエスキス、サン=ブリアック)」 1887年 ブレスト美術館
ベルナールでは「会話」に目が留まりました。ステンドグラスのための水彩の習作です。3人の人物が談笑していますが、確かにいずれも色面を黒い輪郭線で囲んでいます。なお本展、ゴーギャンとあるので、ゴーギャンの作品で大半を占めていると思いがちですが、実はそれ以外、つまり「ポン=タヴァンの画家たち」の方が多く出品されています。そしてむしろそうした画家たちの作品にこそ見るべき点が少なくありません。
1889年、ゴーギャンはパリでポン=タヴァンで描いた作品の展覧会を開きました。またこの年の6月にはポン=タヴァン近くの小村、ル・プールデュへ移り、仲間たちと装飾の仕事を請け負うなど、新たな交流を深めていきました。
先に触れたセリュジエと親交があったのがジョルジュ・ランコブです。「森の中の3人のビグダン地方の女性」はどうでしょうか。また赤い幹の森。同じく3人の女性が描かれています。彼女たちのポーズもやはり祭儀のためのものだそうです。技法はテンペラ。そして構成はより装飾的です。黒い輪郭線も目立っていました。
最後にゴーギャンがポン=タヴァンに来たのは1893年です。滞在は数ヶ月。この後フランスを去り、マルキーズ諸島へ向かうことになります。

モーリス・ドニ「小舟のブルターニュの女性」 1891-92年 カンペール美術館
「ゴーギャンの最後の仲間たち」として括られた画家もまた魅惑的でした。まずはドニです。彼は1890年にはポン=タヴァンを訪れ、ゴーギャンに出会っています。今回のドニ作品は全部で5点です。「小舟のブリュターニュの女性」は母子の愛情を描いたもの。伝統的なブリュターニュの衣装をまとった母が小舟の上で幼子を守るように抱いています。こげ茶色に青い線を混ぜて海面を描く一方、舟の中は薄い水色で表現しています。そのコントラストも興味深いのではないでしょうか。

フェルディナン・ロワイアン・デュ・ピュイゴドー「藁ぶき家のある風景」 1921年 カンペール美術館
フェルディナン・ロワイアン・デュ・ピュイゴドーという画家がいました。必ずしも有名ではないかもしれません。しかしながら作品は美しい。「藁ぶき家のある風景」です。大海原を背に一面のオレンジ、ないしは薄ピンク色に染まった夕景を表しています。空の中央には黄色い太陽が輝いていました。水面には帆船が浮かびます。やはりオレンジ色です。海辺には一軒の家が建っています。確かに藁ぶきです。夕飯の支度をしているのでしょうか、煙突からはゆらゆらと煙が立ち上っていました。そして一人黄昏る人。ポツンと座っては海を見ています。何とも牧歌的な光景です。この眩い色彩感、ピュイゴドーは光彩主義の画家として知られているそうです。
ほかには独学で絵を学んだシャルル・ラコストや、晩年にアルコール中毒で作品を破壊してしまったエミール・ジュールダンも登場。ともに知られざる画家と言っても良いでしょう。そもそも国内でポン=タヴァン派を紹介するのが22年ぶりです。作品の多くは海外の所蔵です。日本初公開も少なくありません。

ポール・ゴーギャン「タヒチの風景」 1893年 ニイ・カールスベルグ・グリプトテク美術館
気がついてみれば会期末を迎えていました。12月20日まで開催されています。
「ゴーギャンとポン=タヴァンの画家たち展」 パナソニック汐留ミュージアム
会期:10月29日(木)~12月20日(日)
休館:11月4日(水)、11月11日(水)
時間:10:00~18:00 *入場は17時半まで。
料金:一般1000円、大学生700円、中・高校生500円、小学生以下無料。
*65歳以上900円、20名以上の団体は各100円引。
*ホームページ割引あり
住所:港区東新橋1-5-1 パナソニック東京汐留ビル4階
交通:JR線新橋駅銀座口より徒歩5分、東京メトロ銀座線新橋駅2番出口より徒歩3分、都営浅草線新橋駅改札より徒歩3分、都営大江戸線汐留駅3・4番出口より徒歩1分。